この記事は、書庫のある家.comの「まさか!10万円超でも医療費控除を「年収の高い人」がやると損をする場合」に移転しました。
ちなみに、年間医療費が「10万円以下」ならこちらの記事が参考になるかと思います。
関連記事 年間10万円以下でも医療費控除ができる共働き夫婦の裏ワザ
鈴木太郎:年収400万円
鈴木花子:年収120万円
※子どもはいない
太郎さんは日本の平均的なサラリーマンの年収、花子さんはパートとしての年収です(会社の手当てなどはないので、130万円にならない程度に働いています)。
今年は年間医療費が12万円になりました。
さて、どっちで医療費控除をするのが得なのでしょうか?
私もそう思い込んでいました。
これは、所得税の税率が、所得に応じて
5%→10%→15%→20%→23%→30%・・・
と増えていく「累進税率」という制度になっているので、税率の差の分だけ得をする、という説明が多いです。
でも、本当にそうなのでしょうか?
今回は、「所得税・住民税簡易計算機」を利用して、計算してみました。
<太郎さん>
年収400万円
給与所得控除144万円
差引 266万円(1)
社会保険料控除56万円(年収×14%と仮定)
配偶者特別控除21万円
基礎控除38万円(所得税の場合)
控除合計 115万円(2)
(1)-(2)=所得金額151万円
所得税率は所得金額195万円以下のため最低の5%です。
細かい調整が入りますが、「所得税・住民税簡易計算機」を使うと次のようになりました。

いろいろ書いてありますが、ざっくり言えば、
所得税・復興特別所得税:77,000円
住民税:158,500円
となります。
<花子さん>
年収120万円
給与所得控除65万円
差引 55万円(1)
基礎控除38万円
控除合計 38万円(2)
(1)-(2)=所得金額17万円
所得税率は所得金額195万円以下のため最低の5%です。
細かい調整が入りますが、「所得税・住民税簡易計算機」を使うと次のようになりました。

花子さんは、
所得税・復興特別所得税:8,600円
住民税:24,500円
となります。
・・・あれ?
この場合は、2人とも税率は「5%」になりましたね。
税率の差はないことになります。
医療費控除は、
(1)10万円
(2)総所得金額等×5%
のいずれか少ない方がハードルとなります。
「総所得金額等」というのが難しい言葉なのですが、給料しかもらっていな人は、「給与所得控除後の金額」をいいます。
勤め先からもらう源泉徴収票のこの部分を見てください。

これをもとに計算してみましょう。
<太郎さん>
年収400万円
給与所得控除144万円
差引 266万円
266万円×5%=133,000円>100,000円
よって100,000円
年間医療費120,000円-100,000円=20,000円まで控除可能

※「所得税・住民税簡易計算機」の下の方に入力する欄があります。
<花子さん>
年収120万円
給与所得控除65万円
差引 55万円
55万円×5%=27,500円<100,000円
よって27,500円
年間医療費120,000円-27,500円=92,500円まで控除可能

<医療費控除が可能な部分>
太郎さん:20,000円
花子さん:92,500円
あれ? 医療費控除できる金額が7万円以上違いますね。
給与所得控除後の金額で、運命が分かれます。
これは、年収310万円以下であれば、ハードルが10万円未満になるためです。

<医療費控除前>
所得税・復興特別所得税:77,000円
住民税:158,500円
<医療費控除後>
所得税・復興特別所得税:76,000円
住民税:156,500円
節税額 ▲3,000円
花子さんがもし医療費控除をすると、

<医療費控除前>
所得税・復興特別所得税:8,600円
住民税:24,500円
<医療費控除後>
所得税・復興特別所得税:3,900円
住民税:15,100円
節税額 ▲14,100円
<節税額>
太郎さん ▲3,000円
花子さん ▲14,100円
このように、花子さんがした方が、1万円以上も多く節税になっていることがわかります。
医療費控除は「支払った人」が行うため、花子さんが医療費を支払っていれば、花子さんが医療費控除ができます。
まあ、誰が払ったかなんて・・・ゴニョゴニョ。
年収103万円から120万円までの方も、「所得税・住民税簡易計算機」を使ってシミュレーションしてみて下さい。
なお、産休や育休の場合、つまり、1年のうち数か月しか給料をもらっていないようなときには、同じように医療費控除を夫より妻がした方がよい場合が出てくるかと思います。
「給与所得の源泉徴収票」と「医療費の領収書」をもとに確定申告をすることになります。
次のページへ 子どもは誰の扶養にすると節税?(16歳未満の年少扶養控除)
いずれにしても、自分で条件を変えてシミュレーションしてみると、新たな発見があるかもしれませんよ。
次のページへ 医療費控除で知っておきたい10の失敗事例
結論:医療費が10万円超なら年収が高い方という常識は正しいとは限らない。
私も年間医療費が「10万円超」なら年収が高い方で医療費控除をした方が得、というのが常識だと思っていたら、コメントでご指摘いただいて、どうもそうではないことが分かりましたので、記事にします。ちなみに、年間医療費が「10万円以下」ならこちらの記事が参考になるかと思います。
関連記事 年間10万円以下でも医療費控除ができる共働き夫婦の裏ワザ
鈴木太郎・花子夫妻は、年収が高い太郎さんが医療費控除をすべきなのか?
<前提条件>鈴木太郎:年収400万円
鈴木花子:年収120万円
※子どもはいない
太郎さんは日本の平均的なサラリーマンの年収、花子さんはパートとしての年収です(会社の手当てなどはないので、130万円にならない程度に働いています)。
今年は年間医療費が12万円になりました。
さて、どっちで医療費控除をするのが得なのでしょうか?
10万円超なら年収が高い方が良いといわれる理由
常識では、10万円を超えたら年収(所得)が高い方でやった方が良いといわれることがあります。私もそう思い込んでいました。
これは、所得税の税率が、所得に応じて
5%→10%→15%→20%→23%→30%・・・
と増えていく「累進税率」という制度になっているので、税率の差の分だけ得をする、という説明が多いです。
でも、本当にそうなのでしょうか?
今回は、「所得税・住民税簡易計算機」を利用して、計算してみました。
<太郎さん>
年収400万円
給与所得控除144万円
差引 266万円(1)
社会保険料控除56万円(年収×14%と仮定)
配偶者特別控除21万円
基礎控除38万円(所得税の場合)
控除合計 115万円(2)
(1)-(2)=所得金額151万円
所得税率は所得金額195万円以下のため最低の5%です。
細かい調整が入りますが、「所得税・住民税簡易計算機」を使うと次のようになりました。

いろいろ書いてありますが、ざっくり言えば、
所得税・復興特別所得税:77,000円
住民税:158,500円
となります。
<花子さん>
年収120万円
給与所得控除65万円
差引 55万円(1)
基礎控除38万円
控除合計 38万円(2)
(1)-(2)=所得金額17万円
所得税率は所得金額195万円以下のため最低の5%です。
細かい調整が入りますが、「所得税・住民税簡易計算機」を使うと次のようになりました。

花子さんは、
所得税・復興特別所得税:8,600円
住民税:24,500円
となります。
・・・あれ?
この場合は、2人とも税率は「5%」になりましたね。
税率の差はないことになります。
医療費控除は「給与所得控除『後』の金額」で運命が分かれる。
だったら、夫で妻でも同じ・・・と言いたいところですが、実際に医療費控除を見てみましょう。医療費控除は、
(1)10万円
(2)総所得金額等×5%
のいずれか少ない方がハードルとなります。
「総所得金額等」というのが難しい言葉なのですが、給料しかもらっていな人は、「給与所得控除後の金額」をいいます。
勤め先からもらう源泉徴収票のこの部分を見てください。

これをもとに計算してみましょう。
<太郎さん>
年収400万円
給与所得控除144万円
差引 266万円
266万円×5%=133,000円>100,000円
よって100,000円
年間医療費120,000円-100,000円=20,000円まで控除可能

※「所得税・住民税簡易計算機」の下の方に入力する欄があります。
<花子さん>
年収120万円
給与所得控除65万円
差引 55万円
55万円×5%=27,500円<100,000円
よって27,500円
年間医療費120,000円-27,500円=92,500円まで控除可能

<医療費控除が可能な部分>
太郎さん:20,000円
花子さん:92,500円
あれ? 医療費控除できる金額が7万円以上違いますね。
給与所得控除後の金額で、運命が分かれます。
これは、年収310万円以下であれば、ハードルが10万円未満になるためです。
さて、税金はどうなった?
太郎さんがもし医療費控除をすると、
<医療費控除前>
所得税・復興特別所得税:77,000円
住民税:158,500円
<医療費控除後>
所得税・復興特別所得税:76,000円
住民税:156,500円
節税額 ▲3,000円
花子さんがもし医療費控除をすると、

<医療費控除前>
所得税・復興特別所得税:8,600円
住民税:24,500円
<医療費控除後>
所得税・復興特別所得税:3,900円
住民税:15,100円
節税額 ▲14,100円
<節税額>
太郎さん ▲3,000円
花子さん ▲14,100円
このように、花子さんがした方が、1万円以上も多く節税になっていることがわかります。
医療費控除は「支払った人」が行うため、花子さんが医療費を支払っていれば、花子さんが医療費控除ができます。
まあ、誰が払ったかなんて・・・ゴニョゴニョ。
年収103万円以下だと効果なし
ちなみに、今回の話は大前提として、妻も「ある程度の税金」を払っている必要がありますので、年収103万円以下で所得税も住民税もそもそも払っていないのであれば、医療費控除ができません。年収103万円から120万円までの方も、「所得税・住民税簡易計算機」を使ってシミュレーションしてみて下さい。
なお、産休や育休の場合、つまり、1年のうち数か月しか給料をもらっていないようなときには、同じように医療費控除を夫より妻がした方がよい場合が出てくるかと思います。
手続きは「確定申告」で!
年末調整では医療費控除はできないですよね。「給与所得の源泉徴収票」と「医療費の領収書」をもとに確定申告をすることになります。

子どもがいるなら・・・
最後になりましたが、年収が500万円、600万円となってくると、どこかで損得が逆転するかと思いますし、そもそも子どもを妻の扶養にすると、住民税の非課税になる場合もありますので、今回は夫の年収400万円、子どもなしでやってみました。次のページへ 子どもは誰の扶養にすると節税?(16歳未満の年少扶養控除)
いずれにしても、自分で条件を変えてシミュレーションしてみると、新たな発見があるかもしれませんよ。
次のページへ 医療費控除で知っておきたい10の失敗事例



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