平成28年度税制改正では、実現しませんでした!


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日経新聞8月25日版では、ベビーシッター代が「特定支出控除」という形で控除できるかもしれないという厚生労働省の税制改正要望について記事が出ていました。

ハッキリ言って、特定支出控除は使い物になりません。

したがって、このニュースを読んだ多くの人は、基本的に使えないと思った方がいいでしょう(使えても効果が薄い)。

しかし、この税制改正は要望なのでまだ決定したわけではありませんが、「特定支出控除」でやろうとしていることは、ある人たちに朗報になるかもしれません

それは、「自営業者・フリーランス」の人たちです。

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所得税の計算方法は、ざっくり言うと、

(1)収入-必要経費=所得
(2)所得-所得控除=課税される所得
(3)課税される所得×税率=税額
(4)税額-税額控除=納める税額


と4段階です。

注目したいのは、3つのタイミングで「マイナス」があるという点です。

会社員に必要経費なんてないよ!という方もいるかもしれませんが、

「給与所得控除(概算の必要経費)」と呼ばれているものが会社員の必要経費です。

給料に対して一定の割合をかけて概算で計算します。

逆に言うと、スーツを買おうが仕事用のカバンを買おうが、それはこの給与所得控除の中に含まれているので、別途認めない、というわけです。

それだと、とっても必要経費がかかっている人は困るよ!ということで、

「特定支出控除(実費の必要経費)」という制度があります。

まあ、本来の姿は、実費の必要経費を引くわけですが、実は、こっちを使うと不利な人の方が圧倒的に多いです。

なぜかというと、給与所得控除の一定の割合が高いからですね。
給与所得控除

例えば、年収400万円の人は、
400万円×20%+54万円=134万円が
概算の必要経費
となります。

年間で134万円、必要経費を使ってますか?

月に11万円以上、必要経費を使ってやっと到達します。


一方、特定支出控除が使えるのは、「給与所得控除の50%」を「実費の必要経費」が超えた場合です。

年収400万円の人なら、67万円を超えたら、超えた分をさらに控除できるということになります。

つまり、毎月ベビーシッター代に7万円使っていれば、年間84万円で

84万円-67万円=17万円分

が追加の必要経費
として認められるようなものです(費用に上限がない場合)。


年収400万円くらいの方なら、所得税と住民税の合計税率は15%~20%くらいでしょうか。

17万円×20%でも、3万4千円です。

年間84万円も払っているのに、この制度が導入されても、実質的には3万円前後の節税効果しかありません。


一方、日経新聞では年収800万円の場合が例になっていました。

ちょうど200万円が給与所得控除になるので、半分の100万円を超えると、超えた分について、必要経費の上乗せができます。

例えば、月に20万円以上のベビーシッター代を使っている弁護士さんが年収が800万円で、年間240万円だとしましょう。

100万円を超える140万円分が控除できます。

年収800万円だと所得税と住民税の合計税率は20%~30%くらいでしょうか。

30~40万円前後の節税になりそうです。

・・・なりそうですが、もともとかなり払っているので、どうなんでしょうね。


日経新聞にも書いてありましたがこの制度は、高所得の人ほど有利な制度です。

まあ日経新聞を読むようなバリバリ働く方にとっては、使える制度になるかもしれませんね。

一方、年収200~300万円くらいの方にとっては、ほとんど使えない制度です。

それでいいのでしょうか??



さて、前置きが長くなりましたが、今回のテーマはそこではありません。

自営業者にとって、ベビーシッター代は、税務調査で「クロ」と言われてる可能性が最も高い費用です。

税理士に相談しても、9割以上の税理士は、「それは経費になりません」という費用です。

だから、確定申告でベビーシッター代を必要経費にするのは、現在、最も危険な行為の1つです。

こんな本まであります。

なぜキャバクラ代がOKでベビーシッター代が経費で落とせないのか!? ザイが作ったフリーランスのためのお金の本


この本の42~45ページでは、保育園のお迎えなどのベビーシッター代が年間240万円になって、それを経費にしたところ、

「M区でベビーシッター代を経費として認めたことはないんですよ!」

と言われて、ペナルティも含めて約60万円を払うようなストーリーが載っています。

まあ、この本では、45ページに1つの解決策も書いてありますが、正直、そのアドバイスは問題があるように思いますので、ご注意ください。


さて、もし、今回の税制改正で、ベビーシッター代が特定支出控除の対象となるためには、そもそもベビーシッター代が必要経費に該当するという前提がないとおかしいです。


税務署も税理士もみんなベビーシッター代について、間違っていたことを言っていた、ということを認めるようなものです。


もしこれが、医療費控除のように所得控除であれば、話は別です。

私は最初、そっちならありうると思っていました。

(1)収入-必要経費=所得
(2)所得-所得控除=課税される所得
(3)課税される所得×税率=税額
(4)税額-税額控除=納める税額



特定支出控除は、必要経費の計算で出てくる話です。


会社員はベビーシッター代が特定支出控除(実費の必要経費)に入るのに、

自営業者は相変わらずベビーシッター代がアウト!なんてことは理屈に合いませんよね。



だからびっくりしたのです。


そもそもなぜベビーシッター代が必要経費にならないのかについては、結構あいまいで、理屈がありません。

この点、勉強したい方は大学教授の三木先生の寄稿記事が面白いと思います。

参考 [PDF] シングルマザー弁護士のベビーシッター代は必要経費

まあ、このあたりは、時代の流れに税金の制度が追いついていないのだと個人的には考えています。


今のところ、自営業者も必要経費になるという話はありませんが、今後の動きに注目したいところです。


ちなみに、こんな話をすると、自営業者は関係ない経費も必要経費にするからそんなのダメだ!という方がいますが、

「必要経費にならないもの」を必要経費にする話

と、
 
「必要経費になるはずのもの」を必要経費にする話

は違いますので、一緒にしないでください。

もちろん、すべてのベビーシッター代が必要経費になるのではなくて、業務に必要なものが必要経費になるというのが大原則です。